道の真ん中に雀が落ちていた。
自転車だったので一旦通りすぎてしまったが戻った。
怪我をしているのだと思った。
動いていないのは警戒しているからだと思いたかった。
持ち上げて掌にのせてみた。
まだ暖かかった。
でも動かなかった。
嘴に血がついていた。
何処か人の目に付かない場所に埋めようと思って左手に雀をのせたまま自転車を押して歩いた。
見知らぬ中年男性に声をかけられた。
「怪我をしているの?」
「違います。亡くなっているので埋めようと思うんです」
中年男性は言った。
「良い事があるよ」
何故良い事があると言えるのだろうか。
埋めてあげるから?理解ができなかった。
自転車を押しながら人目に付かない場所を探した。
ある程度人目に付かない場所を見つけた。
歩いている間ピクリとも雀は動かなかった。
亡くなっているのだと理解してもこの暖かさが理解を拒んだ。
素手では掘れなかったので太い枝が落ちていたのでそれを利用する事にした。
左の掌に雀をのせていては掘れなかったのでハンカチの上に雀を横たえた。
最初掘ろうとした場所は木の根が多く雀の軀が入るほど掘れなかった。
近くの別の場所にした。
今度は掘れた。
ティッシュかなにかに包んで埋めようと思ったけどティッシュを持っていなかった。
何かないか探して紙があった。
せめて土の上に直に軀を横たえるのではなく紙の上に横たえてあげたかった。
もう一度雀の軀に触ったら冷たくなってきていた。
でもまだ少し暖かくて柔らかかった。
頭を撫でた。反応しなかった。
匂いを嗅いでみた。土の匂いがした。
眼を閉じてあげたかったけどできなかった。
紙の上に軀を横たえて上から土をかぶせた。
近くにあった植物の葉を飾った。せめてもの餞に。
自分の左の掌を見た。
土と雀の血で汚れていた。 外傷は無かったのに血を吐いて死んでしまった雀。
家にいる体調をくずしている家族と元気な鳥を想った。
埋めた後、本屋に行った。
今○子の文○様と私を買いに行かなければならなかったから。
でも今日は読めない。
家に帰った後無事な家族と鳥を見た。安心した。
少し泣いた。外では泣けなかったから。
今も少し左の掌にあの雀の感触が残っている。
とても軽い雀の感触が。
今日あった事。